小さなお店の販売戦略〜提供価値を整理する その①
ブログをご覧の皆さま、こんにちは!
中小企業診断士の米澤智子です。
公的機関の職員として働く、企業内診断士の目線から
経営者の皆様に役立つ情報をお届けいたします。
今回は、「小さなお店の販売戦略〜提供価値を整理するその①」です。
1.お金をかければ、よい販促ができるとは限らない
私は昨年度まで、商店街に所属する小さなお店の経営者に対し
中小企業診断士を派遣する事業を担当していました。
「商店街に所属する小さなお店」とは
例えばお肉屋さんやカフェのような飲食関係から
整骨院のようなサービス業をイメージしてください。
幅広い形態・業種のお店に専門家を派遣していましたが、
専門家派遣をご希望される理由の第一位は、これです。
「販促にお金をかけているのに、お客様が集まりません」
専門家派遣の第一回目には、今まで実行された販促方法を伺います。
・チラシ
・SNS
・ホームページ
みなさんそれ相応の費用をかけて、
お店の運営が毎日ある中販促をされていました。
でも、効果がでない。売上が上がらない。
これはなぜなのでしょうか。
2.理由その①:お客様に提供する「価値」を整理できていない
理由その①は、「お客様に提供する『価値』を整理できていない」です。
この点を言葉に整理できていないと、販促をしても
お客様にお店の魅力が、正しく伝わりません。
事例として、都内の編み物教室をご紹介します。
「1回1000円の体験講座には来るが、月謝制会員にはなかなか申し込んでくれない」
というお悩みから、専門家派遣の申込みをいただきました。
体験講座は大手習い事サイトに掲載しているため、毎月の掲載料がかかっており
ここをやめようかどうか悩んでいる、という点が最初のご相談でした。
この編み物教室の先生は、プロのニットデザイナーです。
この方が作るオーダーメードニットは1着20万以上する、
とても高い技術をもった方です。
ここで、派遣した中小企業診断士の先生と、編み物教室の「価値」を整理しました。
最初、店主は「編み物技術が身につく」を提供価値と挙げました。
この教室には、数年にわたり会員となっている常連生徒さんがいたので
派遣した先生から、
「長く会員でいらっしゃるお客様は、
編み物スキルのためだけにこの教室に通っているんですか?」
という問いかけをしました。
その問いかけから店主が気づき、この編み物教室が提供する価値は
・複数人で一緒に習う形式なので、編み物友達ができる
・お茶を飲みながらおしゃべりをして、楽しい時間を過ごすことができる
以上2点と整理しました。
お客様は、確かに「編み物」を学びに来ているのですが
それ以上に、「同じ受講生や先生とのふれあい」を楽しみに来ていたのです。
そこで、この整理できた2点を
チラシや教室前に設置した立て看板に、目立つように記載しました。
チラシは数千円で印刷し、同じ商店街に加盟するお店に置いてもらいました。
そうすると、その月だけで、
月謝制に申し込んだ新会員が3名増えたそうです。
月謝制は月6,000円なので、3名で18,000円/月の売上げアップにつながりました。
大手習い事サイトも、新規会員の呼び込みになることから
現在も継続しています。
3.販促はツールではなく、「何を伝えるか」が重要
チラシを配れば、SNSをやれば、
お客様はお店に来てくれるのではないか。
そう思われている店主さんも多いと感じています。
しかし、各種販促はあくまでも「ツール」であり、手段です。
重要なことは、そこで「何をお客様に伝えるか」です。
つまり、お店がお客様にとって「どんな利便性があるか」
「お店にきたら、どのようなメリットが得られるのか」
を販促ツールで訴えることができなければ、
他に数多くある類似店舗やサービスに打ち勝つことはできません。
・高い技術があります
・よい商品があります
それが御社の「強み」ではありません。
あなたの会社は、それで「どんなメリット=提供価値」を
お客様に与えているのでしょうか?
新しい販促手段を考える前に、一度立ち止まってみると
新たなお店の価値が発見できます。
次回は、今回の続きを解説します。