オフィスを借りるときに注意したい3つのポイント
ブログをご覧の皆様、こんにちは、中小企業診断士の糸井川瞬です。
私は不動産マネジメント会社でオフィスビルの運営管理部門に管理職として在籍しています。
そこで得た経験・事例をもとに、中小企業診断士の目線から経営者の皆様に有益な情報をお伝えします。
はじめに
事業を進める上で切っても切り離せないもの、そのひとつにオフィスビルがあります。
借りる、持つ、貸す、シェアする、様々な形がありますが、そのどれか1つにはどんな企業も関わっています。
今回はその中でも最も多いであろう「借りる」にフォーカスしてお話します。
事業拡大のためにもっと広い部屋に引っ越すぞ!
不動産のことはわからないけど不動産仲介会社がOKって言っているから大丈夫だろう!
と勢いで契約し後々後悔…そのようなことが無いように必要な勘所は押さえておきたいです。
そのために重要なポイント3点に絞ってお伝えします。
①資金繰りも考えたい移転計画
オフィスを移転するにあたり必要な初期費用として移転先オフィスへの敷金を預け入れ、
入居工事費用と普段発生しない出金が発生します。
敷金は今入居中オフィスから返還される問題ないでしょ、
とお考えの方もいるかもしれませんが実は注意が必要です。
以下がオフィス移転に伴うお金の出入りを示した図です。
※4月に移転先オフィスに引っ越して稼働開始する想定です。
※赤:出金 青:入金
1月:移転先オフィスと賃貸借契約締結と同時に敷金を支払う
3月:移転先オフィス入居工事開始⇒入居中・移転先オフィスで2重賃料を発生
4月:入居中オフィスで原状回復工事開始、2重賃料支払い継続、
移転先オフィス入居工事費用を支払う
5月:入居中オフィス原状回復工事費用を支払う
6月:入居中オフィスから敷金が返還される
1月に移転先オフィスへの敷金支払いに始まりに入居・原状回復工事費用を支払い、
最後に6月になってやっと入居中オフィスから敷金が返還されます。
つまり返還される敷金を活用して発生する支出に充填する事が出来ないスケジュールになっています。
移転を考える際は資金計画も一度ご検討頂くのが安全です。
②原状回復工事内容を明確にしてもらう
①でも触れましたが移転の際、入居中のビルで原状回復工事が発生します。
多くの賃貸借契約書では原状回復工事について、
「入居時の原状に復旧する」とだけ記載されています。
それによって工事内容に幅広くとらえ、なるべく多くの工事をテナント側に負担させたい、
とオフィスビルオーナーが考えているためです。
なので解約時に想定以上の見積金額を提示されてトラブルに。といったケースが少なくありません。
対策として
- 原状回復工事内容の仕様書を契約書に添付してもらう
- 原状回復工事金額の概算見積を作成してもらう
といったことをオフィスビルオーナーに依頼することで
- 工事内容を過剰に追加されることを防止出来る
- 退去時にかかる費用を前もって把握しておける
というふうに対応できます。
③オフィスビルオーナーの属性を知る
大枠で分類するとオフィスビルのオーナーは3つになります。
A:個人や事業会社系
B:投資家長期所有系(リート物件等)
C:投資家短期所有系
AやBは長期的に不動産を所有する方針で、安定的なビルの収益を目指します。
そのため空室は早く埋めたい、入居テナントとは長期的に関係性を構築していきたい、
という考えを持っています。
よってより実現性の高い、相場に沿った賃料設定や賃料改定交渉を進めてきます。
一方Cは短期的にオフィスビルの資産価値を高め、
売却することで得られる利益の獲得を目指す傾向があります。
それを実現するため内装のリニューアル工事等を行いビルの魅力を高め、
市場よりも割高な賃料でのテナント誘致戦略や、
既存テナントの退去もいとわない強気な賃料改定交渉を進めてきます。
Cのようなビルオーナーが購入するのは、
現状手入れが不十分で、リニューアル工事等を手掛けて
ビフォアーアフターで魅力が大きく改善しそうなビル、
ビルグレードは高いけど都心から少し離れた中規模~大型ビル、
が例として挙げられます。
既存テナントの賃料が低く、今後収入の改善の余地が大きそう、という共通点があります。
※もちろんそうではない例もあるのでご了承ください。
長期的に腰を据えてこのオフィスにいたいならA,Bに。
まだまだ成長途中、一旦ビルに入って様子見よう、であればCに。といったイメージです。
ビルオーナーの属性は仲介会社等に聞かないと得られない情報ですが、知っておいて損はないと思います。
最後に
不動産の契約書は慣れてないと読み解くのが大変です。
読んでも頭にはいってこない。そんなときは『特記事項欄』をチェックしてください。
ビルオーナーの多くは自身の契約書フォーマットを持っています。
それを全テナントに使うので、確認する際に全文をいちいち読むようなことはしません。
大切なことやフォーマットから外れたことは
特記事項欄にまとめて記載するケースがほとんどです。
なので特記事項を読むことでポイントを把握できます。
2017年頃からオフィスの空室率は非常に低く(空き部屋が少ない)
ビルオーナー有利な状況が続いています。
その状況下ではテナント側の主張、想いが通らないケースも残念ながら多いです。
しかし上記の事を知っていれば出来る準備も変わってきますのでご参考にしてみてください。