「まちゼミ」から学ぶ、商売の原則
ブログをご覧の皆さま、こんにちは!
中小企業診断士の米澤智子です。
公的機関職員の目線から、経営に役立つトピックスをお届けします。
1.モノ(商品・サービス)の特徴ばかり出していませんか?
私は今度会社で、支援先の商品を集めた展示会を主催します。
展示会に出展する企業をまとめたパンフレットを作るため
約70社からご提出頂いた原稿のチェックをしています。
そこで、気がついたことが……
商品の説明文の多くは、「その商品がいかに高品質か」について
アピールされていました。
- こだわりのある日本製・オーガニックコットンです!
- 日本の職人が手作りでつくっています!
- 高品質な●●という成分をつかっています!
……などといった文言です。
もちろん、これは商品のすばらしい強みの一つです。
社長のこだわりが見える部分ですから、書くことは間違いではありません。
しかし、お客様はなにかしら「お困りごと」があるから
商品にお金を払ってくれるのではないでしょうか?
お困りごととそのお店の商品がマッチしていなければ
いかに商品にこだわりや特殊技術が組み込まれていようと
お金を払ってくれることはありません。
商品の説明文が「こんな困りごとを抱えている人におすすめします」
といった内容で始まっている会社は、70社中数社でした。
2.「まちゼミ」とは?
ここで話を変え、「まちゼミ」についてご紹介します。
「まちゼミ」とは、商店街の店主が講師となって、
長年お店をやっている店主だからこそ知っている
「ちょっとしたコツ」や「くらしに役立つ知恵」を
少人数のセミナー形式で伝えるものです。
費用は無料、または実費の材料費のみです。
愛知県岡崎市の商店街から始まり、今では北海道から沖縄まで
広がっています。
私の支援先だったお店の講座例では
- お子さんの前髪カットのコツ(美容院)
- 本場インド人シェフが教える、カレーづくり(カレー店)
- ローストビーフの作り方(精肉店)
……などなど。
テーマを聞いただけでも「聞きたい!」と思いますよね!
3.困りごとからスタート、しかし売らない「まちゼミ」
この「まちゼミ」には、実施にするにあたりいくつかルールがあります。
そのうちの1つが、「お店の商品・サービスを売らない」という点。
「まちゼミ」はコミュニケーション事業。
店主とお客様がお話をし、相互に交流を深め、
信頼関係を構築することを目的としています。
講座を実施することでお客様にまずは来店してもらい、
お客様が抱えているであろう「困りごと」を
まずはしっかり聞くことを重視しています。
そのうえで、長年お店を経営している店主だからこそ知っている
こだわりやコツを教えるのです。
この「まちゼミ」に参加することで、
お客様が店主の人柄を知り、信頼関係を築ことで
ゆくゆくはロイヤルカスタマーになっていただくことが狙いです。
実際、まちゼミに参加したことで生まれた新規顧客は
その後のリピート率も高いようです。
まちゼミで濃密な信頼関係が構築できていることが要因でしょう。
4.商売の基本は「困りごとの解決」
まちゼミの成功を左右するのは、「ゼミ(講座)のテーマ」です。
店主さんたちはとても悩まれながらテーマを決めています。
うちのお店に来てくれるお客様は、なにに困っているんだろう……
「こうなってくれればいいのに」って●●さんが言ってたな……
こんなことを必死に考えぬいて、テーマを決めるそうです。
「まちゼミ」を初めてやる店主も、ベテランさんも毎回悩まれる点なのだそう。
日頃、仕事に追われていると、なかなか考える時間が取れません。
この「まちゼミ」は、顧客のニーズを考え、実践してみるよい機会と
店主たちは捉えているようです。
「この困りごと、私も思ってた!」と多くの人から関心を集めるテーマだと
申し込みが殺到して、講座の実施回数を増やすこともあります。
まとめです。
自社の商品・サービスの「よい点」をアピールしがちですが、
その商品・サービスは「どんなお困りごとを解決」するのでしょうか?
顧客の視点に目線を変えることで、見えてくるものがあるのではないでしょうか。